「揖保乃糸」ができるまで ー手間ひまをかけた、そうめんの製造工程ー

「揖保乃糸」ができるまで ー手間ひまをかけた、そうめんの製造工程ー

夏の風物詩のイメージが強い揖保乃糸。実は冬につくられていることをご存じでしょうか?「揖保乃糸」は毎年、湿気が少なく、麺が締まる寒い時期の10月から4月の限られた時期に製造されます。年中生産できるわけではなく、揖保乃糸組合加盟の製麺業者しか製造できないため、揖保乃糸の生産量には限りがあるのです。


そうめん作りはめん生地づくりから始まります。このめん生地を少しずつ丁寧に引き伸ばし、一本のそうめんに仕上げていきます。早朝からこねはじめ、合わせ、伸ばし、縒り、熟成を繰り返し、全11工程の手間隙をかけ、丸1日、厳寒期は2日1夜かけて、そうめんをつくり上げます。


今回はそのように手間ひまをかけた、揖保乃糸ができるまでの製造工程をご紹介いたします。

 

「揖保乃糸」をつくる11工程 

「めん生地」は、短時間で強引に細く引き延ばそうとすると切れてしまいます。千切れないよう縒りをかけながら無理なく 延ばせるだけ引き延ばし、寝かした後再び延ばす工程を繰り返します。揖保乃糸は、この「延ばし」と「ねかし(熟成)」の工程を繰り返し、製品になるまで11工程を必要とします。



①こね前工程

小麦粉と食塩を水と一緒にこね合わせ、そうめんの生地を作ります。

 

②板木り工程ー作業1

よくこねたそうめんの生地を熟成させ、幅およそ10cm厚さおよそ5cmの麺帯(めんたい)にし、切り出した麺帯を丸状に成型し、"採桶(さいとう) "と呼ばれる桶に巻き込んでいきます。

 板木り工程―作業2

麺帯を数本合わせて、ロールに通し1本にします。その1本になったものを、さらに数本あわせて1本にと、繰り返していきます。



➂小より工程

(1)油返し作業

麺帯をロールに通して、ねじるように縒(よ)りをかけながら、直径およそ20mmの麺紐(めんひも)にしていきます。

(1回目の熟成)

 

(2)細目作業

およそ2時間ねかせた麺紐に、縒りをかけながらロールで直径およそ1 2mmの細さにします。

(2回目の熟成)

 

(3)小均作業
およそ1時間ねかせた麺紐を、さらに縒りをかけながら、直径およそ6mmまで細長くしていきます。

(3回目の熟成)





④掛巻作業

およそ4時間ねかせた麺紐を、掛巻機(かけばき)という機械を使って麺紐に"縒り"を掛けながら、2本の管(くだ)に8の字を描くように掛けていきます。そして室箱(おも)と呼ばれる箱に納められます。

(4回目の熟成)

 

⑤小引き工程ー試し引き作業

およそ3時間後、室箱から取り出した麺紐を、熟成の進み具合や翌日の天候を考えながら、およそ50cm程に引き延ばします。

 小引き工程ー小引き作業

長年の経験をもとに"試し引き作業"を行なった後、道具を調整し効率的に延ばしていきます。

(5回目の熟成)

 

⑥小分け工程

室箱から熟成した麺紐を取り出し、およそ1.3mまで延ばします。

 

⑦門干し工程

(1)つけまえ作業

"はた"につけられた麺をおよそ1.6mに延ばします。

 

(2)あしづけ作業

「はた」につけられた麺を下の部分につけ、1.6mに伸ばします。

 

  (3)はたうわぬきあげ作業

さらに1.6mから2mへと徐々に延ばします。

 

(4)手さばき作業 

「はた」につけられた麺にハシを入れ、均等にさばいていきます。

 

(5)はた守り作業

手さばき作業を終えた"はた"は、乾燥室の温度・湿度や天井扇からの風の流れを見て向きを変えながら、乾燥させていきます。

(6)乾燥作業 

仕上げ乾燥ともいわれ、 "はた"全体を均一に乾燥させながら、ぶらさがり麺などの異常がないかチェックします。




⑧切断工程

 麺水分を12%程度に乾燥させた素麺を1 9cmの長さに切断し、切断面の目視チェックをします。

 

⑨計量、結束、箱詰め工程

 切断したそうめんを50gずつ計量、把紙に組合員コードを刻印した後に結束し、金属検出機を通し、目視による最終品質チェックをおこないながら箱詰めします。

 

⑩製品検査工程

 検査指導員により、格付検査が行なわれます。



⑪倉庫熟成工程

 格付検査を終えた「揖保乃糸」は、専用保管倉庫に入庫されます。



普段は目にすることのない製麺の工程。今は多くが機械化されていますが、生地を「ねかし」「延ばす」ことを丁寧に繰り返す作り方は、600年前から変わっていません。この夏そうめんを召し上がる際には、「そうめんができるまで」に思いを巡らせてみてはいかがでしょうか。